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初日トークショー 「SEX:EL」
2001年12月15日(土) シアター・イメージフォーラムにて
高橋源一郎さん
(写真をクリックすると拡大します)
シアター・イメージフォーラムでおおいに、“性”を語る
小説家、評論家、さらに競馬関連の著書もあり、なんとアダルトビデオの監督の経験もある高橋源一郎さん。『SEX:EL』の公開を記念して、『LISE 嘘』『倦怠』につづく、シアター・イメージフォーラムがおくる性についての決定版 『SEX:EL』についておおいに語りつくす!!
「SEX:EL」
(原題)TOO MUCH FLESH
上映時間1時間40分
2000年/フランス/日活 (R-15指定)
(C)2000 TOLODA BAR-NOTHING TF1 INTERNATIONAL
STAFF
CAST
(
監督)ジャン=マルク・バール
パスカル・アルノルド
(脚本・台詞)パスカル・アルノルド
ジャン=マルク・バール
(撮影)パスカル・アルノルド
(録音)パスカル・アルマン
(オリジナル音楽)イリナ・デチェルミッチ、ミシュコ・プラディ
(音楽スーパーヴァイザー)ヴァレリー・アルベール
(ヴァージン・サウンド)
(
エイミー)ロザンナ・アークエット
(ジュリエット)エロディ・ブシェーズ
(ライル)ジャン=マルク・バール
(バート)イアン・ブレナン
(ヴァーノン)イアン・ヴォグト
(コニー)ステフニ・ウィアー
(フランク)リッチ・コメニッチ
(保安官ウォリー)ハットン・コブ
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こんばんは。
そもそも何で僕がこんなところにいるかっていう問題があるんですが、イメージフォーラムの熱心な会員っていうか、ここでやってる映画のほとんどを見てると思うんですね。
映画はもともと好きなのですが、しかし最近ハズレが多いという事情があって、僕は話題になる映画は見に行くんですが、「ハンニバル」初日一回目に見に行って死ぬほど後悔したとか。「もののけ姫」も「千と千尋」も初日一回目、東急文化会館に行って、わざわざリザーブシートで2500円出して外れるとキツイということがあって、最近イメージフォーラムは打率が高い。僕、ここで見てつまんないなと思ったのは一本しかない。その一本はあえて言いませんが、これはすごい。 ・・・で、九割くらいです。
しかし、ここの欠点はですね、凄く狭いというか目立つ。二回目くらいのとき「高橋さんこれ見るんですか?」って。やっぱりそういうことは言って欲しくなかったです。「高橋さん、こういうの好きなんですか?」とかね。
入り口で話しかけるなら淋しいなと思っていましたが、そんなにイメージフォーラムが好きなら前に来て話してくれって言われて、別にイメージフォーラムが好きなわけではなく、単にここでやってる映画が好きだっていう、そこんところがハッキリしておきたいと思います。
だいたいイメージフォーラムでも夜やるやつね、レイト・ショーを観に来てます。
「少女」見た人? (会場、誰も手を挙げない)
これじゃあ、日本映画もお終いだよ。
あのね、五十男の痛みを知って欲しかったですね。ちなみに、監督は僕の同級生です。
気持ちが分かるって言うか、分かりたくないかもしれませんけど。
こういう話をしていると、普通僕が話す場合は20分が前フリで40分が本題なんですけど、今日20分しかないんで、僕はドキドキしているところもあるんで、「SEX : EL」の話をします。
映画を観れば分かるんですが、そうもいかない場合もあるかなということで、いくつか話したいと思います。僕は、一応観てますから。
色んな文学者の選考委員もやってるんですけど、困った事に読んでこない人がいるんです。
本当に名前は言わないんですけど、年とって偉い人は自分で読まないで、来るタクシーかハイヤーの中で編集者に聞くんですね、「これ、どういう小説?」って。
現場に来て、最初の一時間黙っているんですよ。そうすると大体分かるんですよ。みんな説明うまいし。するとおもむろに「私もそう思います」と。ということが僕の業界ではありますが、僕はちゃんと観てますから。
非常におもしろさを説明するのが難しい映画かもしれないなと思いました。
「SEX : EL」、日本語に訳すと「セックス、超大きい」という、いかにも渋谷っぽいタイトルなんですけど。普通、ミステリーの場合はですね、あまり説明をしない方が言いといわれていますが、この映画の場合はある程度説明しておいても問題はないというか。
ストーリーについてはチラシとかにも書いてあると思うんですが、一応、見所を観ている者の優越的な立場から言いますが、これはね、ある意味、非常にものを考えるというか、観客のほうで映画に近づいていくというか、そういうことを必要とさせる映画の一本だと思うんですね。
だんだん、みなさんの方じゃないんですよ、日本はというか、映画の観客はめんどくさがるようになってきたというか、サービスされるのに慣れてきたというか、何でもやってくれるわけですよね、映画の方で。
例えば昔のゴジラなんか観ますと「ただのヌイグルミじゃん」っていうね。ですから凄いバリバリにCGを組み立てるようにすると「おぉ、リアル!」っていうね。だから四十年位前、僕がゴジラを観た頃は本物かと思いましたね、あれで。それくらい想像力が豊だったとも言えるし、こちらのほうからヌイグルミなのに、こちらから近づけて行けた位だったんですよね。
それが、もう時は経ち、スピルバーグとCGの時代になりまして、だんだんそういうことが苦手になってきて、ちょっと考えたりするのが辛いと言って避けるようになってきたんですね。イメージフォーラムにいらっしゃるような観客の皆さんは、顔を見てもいかにも考えていらっしゃりそうなので安心しましたけど。
で、どういうふうなところが見所かといいますと、タイトルにありますように「SEX : EL」。
ちょっと話サイドに行っていいですか。全然関係ない話。
さっき上で、宣伝の人とか映画館の人とかと話してたんですけど、映画の内容の問い合わせとか、映画館に来て「どんな映画?」って聞く人いますよね、知らないと。
でも、ある年齢以上の人は「いまやってるあの映画あるでしょ、あの、あれだよ」って「SEX : EL」って言えないっていうんですね。それを逆手にとって、「お姉さん、おたくでやってる映画何て言ったっけ?」「『SEX : EX』です」「え、よく聞こえないんだけど」「『SEX : EX』ですが」「え、何だって?」「『SEX : EX』です」って言ってわざと言わせる人も。それになるとセクハラですけどね。
そんなことこだわってるのは55歳以上だそうです。僕なんか平気で言いますけどね。
いわばそれくらいの年齢を堺に、「セックス」っていう言い方を、これで今日七回ですね、終るまで何回言うでしょうね、でも、何回も言ってると麻痺してきますから。「セックス」っていう言葉が一種のタブーとまでは言いませんが、言い難い世代があると思います。っていうか実際にあるんですね。
これもさっき55歳を堺にして薬局に行って「コンドーム下さい」とは言えない、と。そもそも今は薬局じゃなくてドラッグ・ストアですね。だいたいコンビニで売ってるし。「コンドーム下さい」って言わなくても差し出して「はい」でね。壁というかそういうものを自分で作ってる、或いはいつの間にか出来ていて言えなくなっている。しかし、それから後の世代について言えば、だんだん壁が低くなっていったんですね。
で、ここで映画に戻るんですが、簡単に言うとこの「SEX : EL」は55歳以上の世代に取り囲まれている世界と考えればいいわけです。
アメリカなんですけど、アメリカというところは非常に豊かなのか非常に進んでいるのか、非常に頭がいいのかバカなのか、よく分からないですね。ブッシュとか見てると「こいつはバカだな」とか思うんですけども。凄く単純なものから非常に複雑なものまで取り揃えております。それが、いわばアメリカの広さでもありますね。
日本でいうと、そういう壁って年齢だと思います。東京と青森でも少し違うかもしれませんね。大阪も違うかもしれない。でもその差っていうのは年齢の差に比べるとそんなにないわけです。
ところがアメリカの場合は年齢の差にプラス土地の差がありまして、「SEX : EL」の舞台というのもちょっとよくわかんなかったんですけど多分、中部ですね。あっ、イリノイ州? シカゴのあるところですね。アメリカの中部のあたりは、いわゆる穀倉地帯と言われていまして、南部の保守的なのとはまた違った意味で、保守的、伝統的で、外からの干渉を拒否するところがあるんですね。で、非常にモラリッシュです。
アメリカ人がモラルが固いというふうになったときは、凄く固いですね。僕らには分からないような。
例えば、今でも学校で進化論を教えないとかが平気で行われています。
みなさんご存知のように妊娠中絶が禁止されている州があって、そういうことやった医師は射殺されるとかね。よく考えてみればアメリカ原理主義ですからね。イスラムも過激ですがアメリカの原理主義はもっと過激ですからね。日本はいいですよね、原理がない。何でもいいやっていう。
僕、結構そういういい加減なところが最近好きになってきました。
そういう非常に保守的というか、アメリカ原理主義の保守的な人たちが住んでいる世界に主人公がいるわけです。ですからこういう人たちは「セックス」って言うのが恥ずかしいし、薬局行って「コンドーム下さい」も言えません。そういう世界があります。
ただそれだけで全員がそれならよかったんですけど、この物語の非常に面白いところはですね、それにプラスいくつかの苛酷な状況を付け加えています。
これはタイトルにもなっているように、主人公が非常に若いときに男性器が「SEX : EL」、超大きいというふうに言われてという話です。
自分の男性器は、めんどくさいですね、ペニスって言うんですか、自分でも自主規制している気がしてやになってきました。僕もそう考えたらほぼもう五十ですからね。性器のことをふっと言えないですね、四文字言葉とかあるでしょ。小説では書けるんですけど、人前で何十人もいるところでなかなか言えないですよ。だんだん、身につまされてきました。
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