「千と千尋の神隠し」完成報告記者会見 (5)
(質問13)
カオナシについてと、ススワタリは「となりのトトロ」以来13年ぶりの登場しましたが、思い入れがあるのかということについて、もう少し詳しく教えてください。
(宮崎駿監督)
プロデューサーは僕のいないところでカオナシとは宮崎の分身だと言ってますから、そんな難しいことを考えなくても、僕らの中に多分カオナシが住んでいるんですね。プロデューサーの中にも住んでるんじゃないかと思うけど。
ススワタリは、あのシーンで、釜爺と一緒にススワタリがいたらなぁと思っただけで、あと、アイデア不足で、ありものを使ったということで。手足を付け足せばいいわけですから。こんな楽なことはありません。それだけですから。
(司会者)
どうしても監督にお伺いしたかったのは、カオナシの声優さんはどなたなのですか?まさに名無しの状態なんですけども・・・
(宮崎駿監督)
僕もよく分からない。みんな持ってますよね、気持ちはね。
(司会者)
監督ご自身がされているんじゃないですか?
(会場)笑い
(宮崎駿監督)
プロデューサーじゃないかという噂もあるんですけど・・・
(会場)笑い
(質問14)
木村さんは、3年前から宮崎作品にどうしても参加したかったというのは、何かきっかけとなる作品がありましたか?
(木村弓)
3年ほど前と申しましたのは、「もののけ姫」をちょうど見まして、とても心に響くものを感じて、それからなぜかその印象が心から離れない状態だったので、2ヶ月ぐらいそうだったんですね。その時に、ある方から頼まれて、この主題歌を録音してたんですね。その声を聞いた時に、ふと、宮崎さんのキャラクターたちに自分の歌を使えたらいいなという思いが沸いてきて、なんだか不思議な状態になったというのがきっかけです。
(質問15)
ファンタジーの世界は今、変わりつつありますが、その点をどのようにお考えですか?
(宮崎駿監督)
例えば「かちかち山」で、おばあさんを狸が殺しちゃうとか、そう言う話は戦後すぐにそうじゃない話に変えられていて、ずっと問題にされてきたんですよね。
それは同時に、何かというと子供たちの中でおとぎ話が力を失っていく過程でもあったんです。
それは「ちびくろサンボ」は差別なのかどうかということも含めて、おとぎ話がどういう力を持っているのか信じな人たちが色々といじくりまわすんです。例えば、グルム童話なんか殺しあう話が一杯あります。「赤頭巾」なんかも最初は食べられて終わりなんです。「ばかな娘は食べられるよ」、その世界そのものなんですよね。お話としては魅力があるから、あとで漁師がお腹をさいて赤頭巾を助けるみたいな話に発展して生き残ったんでしょうけど。
多分「桃太郎」の話は日本の海外侵略なんかと一緒に重ねられ易いわけですね。実際にそうなり易い話の枠ですから。そいうことに手を出すのは止めた方がいいんですよね。埋もれたものに手を出さない方がいいと僕は思っています。
(質問16)
韓国に発注したことの結果に満足していますか?
(宮崎駿監督)
結果的には非常によかったです。安く作ろうといことではなく、プロダクションの方々がとてもよかったことと、予想外の仕事をやってくださいました。
4人ほど行ったたスタッフは顔色がよくなって帰ってきました。やつれて帰ってくるかと思ったら、ほっぺたがつるつるして帰ってきて。この前も向うにいった責任者の奥さんと会った時に、奥さんから離れると色艶がよくなるのは問題なんじゃ言ったら、そうなんだと奥さんも言ってましたけど・・・(会場笑い)
向うに住みたくなってずっとマンションのチラシを眺めていたという男もいますし。ま、それはともかくとして、公開が澄みましたらプロデューサー共々フィルムを持ちまして、御礼に行こうと思っています。自分たちが関わった仕事がどういうものであったかということを、向うで試写会をやりたいな思って予定しています。
(質問17)
前回、引退宣言を行いましたが今後の御予定は?
(宮崎駿監督)
長編はもう本当に無理ですね。体力的に。無理だと思っていてやれたから本当に幸せだと思っていますけど。
映画はやるのやらないのというより、短いものでもやりたいものがあったらやればいいんで、アニメーションの監督だったらこれは本当に迷惑がかかるんで、今回はスタッフがよくやってくれてカバーしてくれましたけど、次回はもっとボケてるだろうと我ながら思ってます。
(司会者)
といことで、まだまだご質問はあるかとは思いますが、時間が迫って参りましたので、本日はありがとうございまいた。
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