| 「千と千尋の神隠し」完成報告記者会見 (3)
(質問5)
普通であれば子供たちが問題にぶつかって、正面からぶつかったら負けるであろうところで、ファンタジーが力なりうるということについてもう少し詳しく。
(宮崎駿監督)
実際、自分の体験がそうだったんで、不安に満ちていた自信のないこの自分が自由になれたというのは、ある時は手塚さんの漫画であったり、ある時は誰かの書いた本を読んでであったりしたわけです。
「現実を直視しろ、直視しろ」って周りは言うんですけども、現実を直視したら自信を無くして溺れてしまう人間がいる。取りあえず自分が主人公になれる空間を持つというのが、漫画やアニメーションでなくとも神話であったりして、人間たちはもってきたんだと思うんですよね。
さっきの質問と矛盾しているようですけども、僕はファンタジーは必要だと思いますよ。ただ、魔法の力が信じられないとか言う人たちはいます。例えばこの映画に出てくるような世界はありっこないじゃないかと言う人がいると思います。むしろぬけぬけと嘘をつく力というのは強靱さが必要なんで、自分自身の心の中にある純粋さを失うと、僕は精神の衰弱と呼んでいますけど、そうすると自分の物語を作った時に説明を付けはじめるんですよね。それはSFの人たちが「これ四次元波動でなんたらかんたらで、エネルギーがどうのこうの」って。あんなのはただの魔法でしょ。ようするに魔法の一言ですんじゃうわけですよね。
「天空の城ラピュタ」で灯鉱石のの正体が分からなかったと言った人がいたんですけども・・・あれは魔法ですよ。(会場笑い)
それを受け入れなかったという事はそれは精神の衰弱だと思ってるんで。
僕は「ファンタジーはいるんだ」、ただファンタジーがアニメーションであるとか漫画でなければいけないとは思っていません。もっといい形で子供たちにファンタジーを伝えられたらそのほうがいいなと思っています。
(質問6)
今回も声優さんが絶妙にはまっていましたが、脚本段階から想定して(脚本を書くのを)進めるのですか?
(宮崎駿監督)
申し訳ないんですけど、僕は映画もテレビも観ない人間でして、夜中にやってるのは見るんですけど、真夜中はテレビやってないんですよね、あとNHKの番組を見たりして、そのまま寝てしまうというパターンなですけども。知らないんです、何も。
どういう声がいいんだというのは自分の中にそれなりにイメージがまとまるわけですけども、あとはプロデューサーのサイドで色んな声を持ってきてくれてね、「これか、あれか」って。柊さんの声を聞いた瞬間に「ああ、これでいい」って。菅原さんに関しては、あの人しかいないと。
(質問7)
柊さんはカオナシというキャラクターにどういう感想をもたれましたか?
(柊瑠美)
最初、カオナシを見たときはちょっと怖いイメージがあったんですけど、改めて自分が声をやってみると、カオナシは好きな子というか、千尋のために金を出してあげたり、薬湯の札をあげたりして、好意を持っている子に何かをしてあげたいという気持ちがあるというのが、可愛らしいなと思いました。
(質問8)
作品の公開を伸ばしたくなかったと先ほどの監督のコメントにありましたが、「もののけ姫」から4年経った今年に「千と千尋の神隠し」を出したいと思った真相は?
(宮崎駿監督)
予算がありますから、いくらお金をかけてもいいっていうそんな仕事じゃないし、それにずっとやってるのもくたびれますからね、気力と体力と。だからこんなところでよかったなと。
「今年の夏は熱いから公開は秋にしよう」というバカなことはプロデューサーに言ったけど・・・(会場笑い)そういうわけで、こういうことになりました。
僕らはよく言うんですけどね、2時間の映画を3年かけて作るとその3年間って2時間分しかないんですよ。本当にそうなです。いつのまにか「エッ、30になっちゃったの!?」とかね。そういうことが起こるんです。
自分だけ年をとるのはしょうがないんだけど、周りの人がいつのまにか年をとるのは・・・「年とるな!」って言ってもしょうがないんですけど。
だからやっぱり、あんまり時間をかければいいってもんじゃなくて、できるだけ仕事をやりながら他のことをしなさい、と。こっそり姿を消して自分の時間を持つように、スタッフに言ってますけど・・・困ったものです。
(司会者)
そんな4年の年月だったということみたいですね。
(宮崎駿監督)
4年もかかったわけじゃないけど。撮影に入ったのは一昨年の秋から準備に入りましたから。
(質問9)
実際に見せたい女の子がいると仰っていたのですが、こうして出来上がってみてその子に見せられる作品になったでしょうか?また、その子が見て感想があるようでしたら教えていただけますか?
(宮崎駿監督)
まだ見てないようです。見せたいですね。これが幸せだなと思うと同時に、油断ならないなと・・・というのは、10才をとっくに過ぎてますからね。残念な事に。
だからむしろ、新しく10才になった子供たちの反応にちょっとドキドキしています。
その後に思春期というのが待っていますから。10才というのは素直ですよね。お父さんとお母さんの事を千尋は本当に大切な人だと思っていますし、そういう子たちに見てもらいたいとは思っています。
それで、親の正体を見抜けとかね、そういう気持ちで作ったつもりは全然ありません。むしろ、僕はお父さんがお父さんの立場で見てもらいたくないですよね。お父さんもお母さんも、かつて10才だったわけだから、その自分で、千尋の側に立ってこの映画を見てもらいたいですね。そう思っています。
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